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東京地方裁判所 平成7年(行ウ)124号 判決 1996年9月20日

原告

モハメド・アミン

右訴訟代理人弁護士

安藤朝規

被告

法務大臣

長尾立子

右指定代理人

東亜由美

外一三名

主文

一  本件訴えを却下する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一  当事者の求めた裁判

1  原告の請求

被告が原告に対して平成七年五月二二日付けでした在留期間更新不許可処分を取り消す。

2  被告の答弁

(本案前の答弁)

主文第一項と同旨

(本案に対する答弁)

原告の請求を棄却する。

第二  事案の概要等

一  事案の概要

本件は、日本人と婚姻し、「日本人の配偶者等」の在留資格をもって本邦に在留していたパキスタン国籍の原告が、右在留資格による在留期間の更新申請不許可処分の取消しを求めるものである。

被告は、本案前の主張として、原告が右在留資格に係る在留期間の経過後に「短期滞在」の在留資格を取得したことにより、「日本人の配偶者等」の在留資格を更新する余地はなくなったから、訴えの利益がないと主張し、本案について、原告と日本人配偶者とは別居状態にあり、原告は右在留資格を有しないか、又は在留期間の更新を相当とする理由はないと主張する。

二  争点

1  原告が「短期滞在」の在留資格を取得したことにより、「日本人の配偶者等」の在留資格を更新する余地はなくなったといえるか。

2  原告の「日本人の配偶者等」への該当性及び在留期間更新を相当とする理由があるか。

三  争いのない事実等(証拠は括弧内に引用した。)

1  原告は、パキスタン国籍を有する者であるが、昭和六〇年一一月二〇日から昭和六一年三月一七日まで、同年三月二二日から同年五月二一日まで、それぞれ平成元年法律第七九号による改正前の出入国管理及び難民認定法四条一項四号所定の在留資格による上陸許可を得て本邦に在留し、昭和六一年五月二六日、同一の在留資格をもって入国し、その後、在留期間の更新を経て、同年六月二五日、訴外佐藤澄子(以下「訴外佐藤」という。)と婚姻し、同年九月一三日、在留資格の変更を申請し、昭和六二年二月二五日、同法四条一項一六号及び平成二年法務省令第一五号による改正前の出入国管理及び難民認定法規則二条一号所定の在留資格への変更を許可され、その後、数次の在留期間の更新手続を経て、右在留資格は、平成二年六月一日施行の前記平成元年法律第七九号の附則二項により、出入国管理及び難民認定法(以下「法」という。)二条の二第二項、同法別表第二の「日本人の配偶者等」との在留資格(以下「本件在留資格」という。)とみなされることとなった。そして、原告は、本件在留資格につき、平成三年一一月二二日に平成四年三月二三日までを在留期間とする更新許可を、同日には平成七年三月二三日までを在留期間とする更新許可をそれぞれ受けた。(甲一号証の一ないし二一)

2  原告は、訴外佐藤と婚姻後の平成二年夏ころから、コンビニエンス・ストアの経営に関与し、平成三年六月一七日には、原告の頭書住所地に訴外佐藤との共有名義で中古マンションを取得し(甲三号証、乙六号証の二)、ここを住所として生活した。

3  訴外佐藤と原告とは、平成六年七月一八日に訴外佐藤が右マンションを退去して別居するに至り、訴外佐藤は、同年一二月二二日、原告に対して離婚請求訴訟を提起し、本件訴訟の口頭弁論終結日現在も、両名は別居状態にあり、右離婚訴訟が係属している。

4  原告は、平成七年三月一六日、被告に対して本件在留資格に係る在留期間の更新を申請したところ、被告は、同年五月二二日付けをもって、右申請を不許可とする旨の処分(以下「本件処分」という。)をした。

5  原告は、平成七年六月一三日、在留資格を「短期滞在」とする在留資格変更許可申請(以下「本件短期滞在申請」という。)をし、これに対して、被告は、同日、在留資格を「短期滞在」、在留期間を九〇日(平成七年三月二四日から同年六月二一日まで)とする在留資格変更許可処分(以下「本件資格変更処分」という。)をし、また、同日、被告は、原告の申請により、右在留資格につき在留期間を九〇日(平成七年九月一九日まで)とする在留期間の更新を許可した。

四  争点に関する当事者の主張

1  本案前の主張について

(一) 被告

法は、上陸許可又は在留許可に当たり、一個の在留資格及び一個の在留期間を定め、その後に本邦に在留する間は、常時一個の在留資格及び一個の在留期間をもって在留する制度を採用しているところ、原告は、本件処分後に、本件在留資格とは異なる在留期間を九〇日とする「短期滞在」という在留資格で本邦に在留したものであるから、現時点で本件処分が取り消されたとしても、右在留資格の前の在留資格である本件在留資格について在留期間の更新の許可を受ける余地はないから、原告には、本件処分の取消しを求める訴えの利益はない。

(二) 原告

(1) 在留資格をいかに構成するかは法の定めるところであり、二個の在留資格を同時に与える必要がないとしても、どちらかの資格でなければならないという硬直的なものではなく、現在は「短期滞在」であるが潜在的に本件在留資格を有するとすることも可能であり、また、本件における「短期滞在」は本件在留資格の更新不許可を違法として本件在留資格の更新を求める裁判のための在留資格にすぎないのであるから、本件請求が認容されたときは、本件在留資格の更新を許可すると共にこれと矛盾する「短期滞在」を取り消すことによって対処すれば足りるのであって、「短期滞在」の在留資格を得たことで本件の訴えの利益が失われるものではない。

(2) 被告の主張によれば、在留期間の更新を拒絶された外国人は、仮に当該処分が違法であったとしても、在留資格を喪失したまま退去強制の不安の中で当該処分の取消訴訟を遂行すべしという実情を無視した結論となり、適法な在留のために「短期滞在」の在留資格を得たことで本件の訴えの利益が失われるとするのでは、結局、本件処分の違法について裁判を受ける権利を侵害することになる上、「短期滞在」の在留資格を得なかったが故に本件在留資格の更新を求めることができる者との均衡を失し、平等の原則に反する。

(3) 原告は、本邦において本件処分の取消しを訴求するためには、本件在留資格以外の在留資格を取得する意思を有しないまま、「裁判と出国準備」を理由として本件短期滞在申請をしたものであり、右申請に際して、本邦に在留する目的が本件訴訟の遂行にあり、出国準備のための滞在が真意でないことを示した。

よって、本件短期滞在申請は本件在留資格以外の在留資格を取得する真意を欠くものであり、被告担当者もこれを知っていたから無効である。

また、右申請に基づき本件資格変更処分がされたことにより本件訴訟を追行することができないのであれば、原告は右申請をしなかったのであるから、本件短期滞在申請には動機の錯誤があり、原告は右申請において本件訴訟を追行する旨の動機を表示したのであるから、右申請は無効である。

また、本件事情の下において、本件資格変更処分を理由に訴訟要件の欠如を主張することは信義則に反する。

2  本案の主張について

(一) 被告

(1) 本邦における在留期間の更新については、当該外国人が当該在留資格に係る目的を達成するための活動を行う者であり、そのために更なる在留期間が必要と認められる場合に限り、被告において、国内治安、風俗の維持等の諸事情を考慮した上、広範な裁量に基づいて、在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当な理由があると判断した場合に許可することとしている。

(2) 原告と訴外佐藤とは、平成六年七月一八日から別居中であり、同年一二月二二日には同訴外人から離婚訴訟が提起され、本件処分当時において、原告は、同訴外人と本邦において同居し、互いに協力し、扶養しあって夫婦共同生活を営む活動を行おうとする者ではなかったから、本件在留資格に該当する者ではない。

(3) 民法上、婚姻関係が終了していない場合には、本件在留資格該当性が認められるとの見解を前提としても、本件処分当時の状況に照らして、原告には本件在留資格を更新することを適当と認めるに足りる相当の理由がない。

(二) 原告

日本人との間に婚姻関係が成立していれば、本件在留資格に該当するものであって、婚姻関係が不正常な状態となり、別居等の事態が生じたとしても、本件在留資格の該当性を欠くに至るものではない。

被告のように、別居によって本件在留資格が否定されるというのでは、日本人の配偶者と問題を起こせば母国へ退去しなければならないこととなり、その結果、外国人は日本人配偶者に迎合しなければ本邦での生活を送れないこととなり、外国人の人権を著しく侵害することになる。

第三  当裁判所の判断

一 法によれば、本邦に入国する外国人は、本邦において行おうとする活動(法別表二記載の在留資格のうち永住者以外のものについては、その身分又は地位を有する者としての活動)によって定まる所定の在留資格をもって本邦に在留するものとされ、在留資格を有する外国人は、現に有する在留資格を変更することなく在留期間の更新を受けることができるとともに(法二一条)、在留資格の変更を受けることができ(法二〇条)、在留期間の更新又は変更を受けないで在留期間を経過して本邦に残留する者に対して本邦からの退去を強制することができるものとされている(法二四条四号ロ)。また、別表第一上欄の在留資格により在留する者には各在留資格に応じて本邦における活動に制限が加えられている。

以上によれば、法においては、適法な在留のために在留期間を経過していない一つの在留資格が予定されており、在留資格の変更は現に有する在留資格及びその在留期間をこれと異なる新たな在留資格及び在留期間とするものであるから、同時に複数の在留資格を有することは許容されていないものと解すべきである。

したがって、ある在留資格(以下「旧在留資格」という。)を有した者がこれと異なる在留資格(以下「新在留資格」という。)への変更を受けたときは、以後、新在留資格及びこれについて定められた在留期間をもって本邦に在留することとなるから、新在留資格を改めて旧在留資格へ変更することは可能であるとしても、旧在留資格の在留期間を更新する余地はないというべきであり、このような者が旧在留資格の在留期間更新の不許可処分の取消しを求める訴えの利益は新在留資格への変更によって喪失することになると解すべきである。

二  この点につき、原告は、(1) 同時に複数の在留資格を認めても、一方の在留資格を潜在的なものとして処理することが可能であり、旧在留資格の在留期間の更新不許可処分が判決で取り消されたときは、その判決の判断に抵触する新在留資格の取得、在留期間の更新は職権で取り消すことができる旨、(2) 旧在留資格の在留期間の更新が不許可となった外国人は、在留資格の変更によって他の在留資格を取得しない限り、適法に本邦に在留する方途を失うから、在留資格の重複を認めないとの立場は、適法に本邦に在留して右更新不許可処分を争う外国人が置かれた実情を無視するものであり、在留資格の変更を受けることなく旧在留資格の在留期間更新を争う者との均衡を失する旨を主張する。

確かに、在留資格の重複を否定する立場に対しては、旧在留資格の在留期間の更新不許可処分を争おうとする外国人は、新在留資格を取得すれば右処分の取消しを求める訴えの利益を喪失し、新在留資格を取得しないで国外退去を強制されれば、旧在留資格の回復を求めることができなくなるから、結局、旧在留資格の在留期間更新不許可処分を争う方途がないことになるとの批判が可能である。しかし、この場合においても、新在留資格への変更を経ることなく、旧在留資格の在留期間の更新不許可処分の取消しを本案として右処分の続行としての退去強制手続の執行停止を求めることは可能であり、また、新在留資格について旧在留資格への変更を申請することも可能であるから、原告の主張する実情を考慮しても、有効な申請に基づいて在留資格の変更がされた場合に、旧在留資格の重複を否定することが外国人の在留に係る利益を不当に侵害するものということはできない。

また、関係規定に即して検討したとおり、法は、潜在的にであれ複数の在留資格を認めることは予定していないものというべきであり、また、短期滞在が当面の本邦在留の便宜的手段として利用されることがあるとしても、それ自体が独立の在留資格として規定されており(法別表第一、三)、他の在留資格の潜在的資格とし、あるいは他の資格の在留期間更新を得るまでの地位保全を目的とするものと解することはできない。そして、取消判決は行政庁その他の関係行政庁を拘束し、処分庁は改めて判決の趣旨に従った処分をすべきことになるが(行政事件訴訟法三三条一、二項)、仮に旧在留資格につき更新を許可すべき事由があるとの判断が判決で示されたとしても、このことが有効な申請に基づいてされた新在留資格の取得を違法とする理由にはならないから、右判決が確定しても当然に新在留資格が職権で取り消されるべき関係にはない。

なお、旧在留資格の在留期間更新が認められず新在留資格を取得することなく勝訴判決を得た者が旧在留資格の回復を認められるとしても、事実関係が異なる本件と比較して、平等原則の違反があるということはできない。

三  ところで、新在留資格への変更が無効であるときは、旧在留資格との重複は生じない。そして、在留資格の変更は申請者の申請に基づくものであるから(法二〇条二項)、右申請意思に無効となるべき瑕疵が存するときは、これを前提とする許可処分も瑕疵を帯びることとなる。

そして、新在留資格への変更許可は、新たな資格と期間による本邦における在留という便益を求める申請に応える処分であり、その効果としては申請者に対して本邦に適法に在留する地位を与えるものであり、右処分の効果の存否が申請者以外の第三者の権利又は法律関係へ直接影響するものではないと解されるから右申請が無効であれば、これに基づく新在留資格への変更及びこれを前提としてされた在留資格に関する処分も、無効となり得るものと解される。

四  そこで本件について見るに、原告本人尋問の結果及び括弧内に引用した証拠によると、次の事実が認められる。

1  原告は、平成七年五月二二日ころ、本件処分の結果及び「あなたが出国意思を有し、出国準備のため短期間の在留を希望する場合には、一九九五年六月六日までに東京入国管理局に出頭し、所定の手続を行って下さい。」との記載のある通知書(甲二号証)を受け取ったことから、かねて訴外佐藤からの離婚訴訟において訴訟委任していた原告代理人を訪れ、本件在留資格の更新に関する善後策を相談した。

2  原告と原告代理人とは、同年六月一三日、被告担当者に面談し、在留期間更新を求めることとし、それが叶わなかったとしても、日本に在留できる資格を得ることを目的として、両名で、東京入国管理局へ赴いた。

3  原告代理人は、右同日、東京入国管理局において、日本人の法律上の配偶者であれば別居等の事情にあっても本件在留資格に該当すると解すべきであり、この見解に沿う裁判例が存在することを説明して、原告に対する本件在留資格の在留期間の更新をすべきであると主張し、被告の担当職員と交渉した。しかし、被告担当者は、この見解に賛同せず、本件在留資格の在留期間の更新の要請に応じず、なお本邦に在留する方策を尋ねられたのに対して、「出国準備」のための短期滞在との在留資格に変更するというのであれば、これに応ずることができる旨を回答した。

4  そこで、原告と原告代理人とは、事前の打合せどおり当面の在留資格を取得することとし、短期滞在への在留資格の変更及び右資格による在留期間の更新手続をすることとしたが、その際、原告代理人において、訴外佐藤との間に離婚訴訟が係属していること、本件処分についてもこれを訴えにおいて争うほかない旨の発言をし、在留資格変更許可申請書及び在留期間更新許可申請書の各申請人記入欄のうち「変更の理由」及び「更新の理由」以外の部分を原告において記入し、「変更の理由」欄には原告代理人が「裁判及び帰国準備のため」と、「更新の理由」欄には原告が「ジャパニーズ・ファミリー・イン・ジャパン」と英語表記したものを原告代理人において棒線で抹消して「裁判及び出国準備のため」と記載して(乙一、二号証)、各申請書類を作成、提出した。

5  右経過を経て、本件資格変更処分及び短期滞在に関する在留期間更新の許可がされた。

五 右事実関係によれば、本件短期滞在申請時において、原告は、右申請が本件在留資格と異なる在留資格を取得するものであることを認識し、かつ、その意思を有していたものというべきであって、右の効果意思と申請行為との間に不一致はないというべきである。

そして、原告らが本件短期滞在申請の動機であると主張する本件処分に対する取消請求訴訟(本件訴訟)の提起は、原告の今後の意向として原告代理人の発言中に現れたことが認められるが、本件訴訟の本案判決が得られないのであれば本件短期滞在申請をしない旨の意思が表明されたと認めることはできない上、本件短期滞在申請の理由には、「裁判」と共に「帰国準備」と記載されている以上、帰国又は出国をしない動機が表示されているということはできない。また、原告又は原告代理人がいかなる理論的立場に立って、いかなる訴えを提起し、どのように追行するかは、原告及び法律専門家である原告代理人において決定すべき事柄であって、被告担当者としては、原告が在留資格の重複が許されるとの見解に立つものであるかを確認したり、その当否について教示すべき立場にはなく、申請書の記載に従って事務を処理するほかない。そうすると、本件短期滞在申請においては、原告代理人から本件処分を訴訟において争う旨の意向が表明されたにすぎず、これをもって右申請の動機の表明ということはできないのである。

したがって、本件短期滞在申請が原告の真意でないとし、あるいは在留資格の変更によっても旧在留資格である本件在留資格が存続することが申請の要素となっていたと解することはできない。

また、以上説示に係る事実を総合しても、信義誠実の原則に違反するとの事情を見いだすことはできない。

六  なお、本訴口頭弁論終結後、原告代理人から、平成八年七月二日言渡しの最高裁判所平成六年行ツ第一八三号事件の判決及びその一、二審判決並びに原告が「日本人の配偶者等」の在留資格を有することに関する「聴き取り書」を添付して弁論再開の申請がされたが、当裁判所は、その必要がないと判断したので、この点につき、一言付言することとする。

右判決に係る事案は、「日本人の配偶者等」の在留資格で在留期間の更新を受けていた外国人の意に反して短期滞在への在留資格の変更許可がされ、「日本人の配偶者等」の在留資格による在留期間の更新を申請する機会を失わせた事案につき、右短期滞在の在留期間更新不許可処分の取消しを求めるものであり、原告の意思に基づいて短期滞在への資格変更が許可された本件とは事案を異にするものであり、本件においては、原告は、原告が「配偶者としての活動」を行っており、そのために本邦に在留する必要があることを理由として、短期滞在の期間中に「日本人の配偶者等」への在留資格の変更を申請することにより右要件の存否につき公権的判断を受けることが可能であったのであり、また、右申請のために離婚訴訟の判決を待つ必要があると考えるのであれば、短期滞在の在留期間更新拒絶処分(甲五号証によれば、原告は、平成七年九月二〇日以降の更新が拒絶されていることがうかがえる。)の取消しを求める方途もあったというべきである。しかも、右最高裁判決の説示によれば、申請者の意思に基づかない在留資格変更処分であっても、当然に、旧在留資格である「日本人の配偶者等」の資格の存否を判断することが可能であるとするのではなく、短期滞在の在留期間を更新した上、「日本人の配偶者等」への変更申請の機会を与えるべきであるとするものであるから、右判決は、一在留一資格の原則を前提としているものと解される。

また、原告が本件短期滞在申請をしたことが右最高裁判決の判断が示されることを解除条件としていたとするのも、一在留一資格の原則を前提とするものであるところ、前記事実認定に照らして、本件短期滞在申請にかかる附款が付されていたと解する余地はなく、再開申請に添付された証拠関係によっても、前記判断を覆すべきものと認めることはできなかった。

七  以上によれば、原告の本件訴えは訴えの利益を欠くものというべきであるから、これを却下することし、訴訟費用について行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官富越和厚 裁判官竹野下喜彦 裁判官岡田幸人)

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